​Hiko hyakusoku

新型コロナと美容医療のコラム

日本医大名誉教授

日本形成外科学会名誉会員

元日本美容外科学会理事長・会長

     百束  比古  

1. 美容医療の概略と携わる医師の種類 美容医療の概略と携わる医師の種類

 

美容医療とは何でしょうか。

まずは、切る美容医療と切らない美容医療に大別されます。前者は「美容外科手術」であり、後者は「レーザーなどの機器による美容医療」です。ボトリヌス菌毒素やヒアルロン酸などフィラーの注射も後者に含まれます。

美容外科手術には、顔面では二重作成、隆鼻、下眼瞼のたるみ取り、フェイスリフト、エラ削り、体幹ではインプラント埋入による豊胸術、乳房縮小術、弛んだ腹部の形成術などがあります。いずれも目立たない所にではありますが、縫合が必要なキズができます。

一方、切らない美容医療では、レーザー、フラッシュランプやラジオ波によるシミ・シワ・たるみ取り。ボトリヌス菌毒素注射によるシワ取り、フィラー注入によるシワ取りなどがあります。

脂肪吸引は小さいながらキズが出来ないとは言えないので、前者になりますが、脂肪を凍らせて減量する器械による方法は後者になります。

それぞれの利点欠点を簡単に言うと、切る美容外科は効果が長持ちするが、切らない美容医療は繰り返さないと効果が持続し難いということです。

もう一つこの世界について、知ってもらいたいことがあります。それは我が国における美容医療の系列についてです。

美容外科というのは、飽くまでも外科ですから、全身管理の経験や皮膚科の知識の乏しい医師は危険です。その意味で、医学部卒業後に医師免許を取得し研修医2年間を経由しただけでは、美容外科医になるための教育を十分に受けたとは言えません。

 

研修のあと、どこかの大学病院の形成外科に所属し、5年くらい皮膚科や形成外科あるいはその他の外科系の十分な研修を経て形成外科の専門医試験に合格すべきです。それから、美容外科医としてのウデを磨いて美容外科の専門医を取得すれば一人前の美容外科医として認められるでしょう。すなわち、大学の形成外科学教室を全うに経由して初めて信用できる美容外科医になれるのです。また、切らない美容医療専門であれば、大学の皮膚科学教室で研修して皮膚科の専門医を取るべきです。

しかし現在美容医療に就業している医師の中には上述したような卒後研修を受けていない様々な経歴の医師が混在しています。とくにいわゆるチェーン店のような全国展開している所に勤務している医師にはその傾向が強いようです。

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2. 美容医療は不要不急か?

 

新型コロナPCR検査陽性者が増え始めた頃、小池都知事が何度も「不要(用)不急の外出は避けてください」などと口を酸っぱくして言っていたような記憶があります。さて、そこで医療に「不要不急」のものがあるかと問われば、真っ先に美容医療が槍玉に挙げられるでしょう。

確かに直接生命に関わらないと言われば反論はできないかも知れません。しかし、その後の議論で、コロナで死ぬより経済の低下で死ぬ人の方が多くならない政策が必要であるなどと言われていました。同じような理屈で、自分の外観を苦にして自殺する人もいるから、美容医療が生命に関わらないとは断言できない。という考えもあります。

従来より、医師の間では、「美容外科なんて医療ではなく、携わっている医者は程度が低い、といような差別的思考が医師の間で罷り通っています。確かに十分な教育を受けずに美容外科医を名乗っている医師が多いのも事実です。

そこで、日本形成外科学会は美容外科を学問として確立し、十分に教育された医師を排出しつつあるのです。日本美容外科学会は同名で2つあり、よく混同されますが、形成外科を基礎とする方の学会は英語略名が『JSAPS』(Japan Society of Aesthetic Plastic Surgery) であり、他方は『JSAS』(Japan Society of Aesthetic Surgery) であり、『Plastic=形成』がないのです。すなわち、形成外科を基礎としている必要はないのです。私が所属し会長や理事長を歴任したのは、勿論前者です。実際に欧米では美容外科は形成外科の一部であるし、再建美容外科(Reconstructive Aesthetic Surgery)という学問分野さえあります。

話が逸れましたが、美容医療は不要不急の医療かといわれれば、そう思う人も思わない人もいるので、断定はやめましょう、ということになります。

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3. 美容医療における感染のリスク

 

①患者から医療従事者へ

患者さんがウイルスの保持者(以後便宜上保菌者と言う)である場合、手術や治療のために、マスクを外さないとならない時、医療従事者に感染する恐れがあります。また、そのような患者さんが触った、トイレのノブや便座などを介して医療従事者に感染する確率があります。また、治療に際して、全身麻酔の気管挿管、角膜保護のためのアイコンタクト装着、粘膜部のレーザー照射、角質層を剥がす施術(ピーリングやQスイッチレーザーなど)、骨切り、レーザー焼灼などがウイルスをエアロゾル化する可能性があり感染のリスクがあります。

②医療従事者から患者へ

勿論このようなことはあってはならないことですが、万が一医療従事者に保菌者がいた場合は、患者さんに感染させる可能性があります。

③患者から患者へ

患者さん同士がソーシャルディスタンスを取らずに同席したり、触った器具を介しての感染ですが、前提として保菌者がいた場合のリスクということで、確率はかなり低いと思います。

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4. 自粛期間の美容医療

 

安倍総理大臣による4月7日から5月25日までの緊急事態宣言は、多くの飲食産業や会社、学校などの休業を誘導しましたが、医業は総じて休めなかったようです。

政治家が言う不用不急の範疇に美容外科は入らないのかとされ、実際に美容外科医の一方の集まりである、内閣府公益社団法人である日本美容医療協会はこの期間自粛を謳いました。しかし、これに属さない美容外科医は、寧ろこの期間が患者獲得の好機とばかり患者を吸引して多くの手術や治療を行ったようです。確かに手術後のダウンタイムがある、美容外科手術は人に合わないで済む期間があれば、受けるチャンスという考え方があってのことでしょうか。

この件に関しては東京のある美容外科施設は手術の予約が多くて大変などとテレビで宣ったら、ある地方の美容外科医がそんなことはないと反論したり、実際はどちらも本当なのでしょう。しかし、全国民が自粛しているのに美容外科手術を煽るのはけしからんと、多くの人は思っていたかも知れません。需要があれば供給するのが資本主義の原則とは言え、多くの店が自粛しているのに、このような風潮はちょっと眉を顰めたくなりますね。

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5. 最近の美容医療広告の氾濫はなぜか

 

この間美容外科チェーンの広告が嫌に増えたと思いませんか。テレビで電車でネットでと美容外科チェーンの広告が蔓延しています。

 

広告を打てば費用もかかりますので、それ以上の収益があるわけでしょう。実際にあるチェーン店は年間300億の広告を打って400億稼ぐという逸話(?)があります。とどの詰まり広告を続けないと患者さんという“金づる”が来てくれないのです。

 

こう言う手法が一般の医療と乖離しているので、美容医療・美容外科なんて医療ではないと言われるのです。しかし、生体の組織を破壊する後遺は医師にしか認められていません。ですから例えば医療脱毛は医師もしくは医師の指示で看護師が行う以外は医師法違反になります。

では何故新型コロナが流行ってから広告が増えたのでしょうか。

 

実数は以前と変わらないのかも知れませんが少なくとも減ったとは思えません。多分まだ経済が悪化する直前の現象であって、これから経済の悪化に伴い状況は徐々に変わって行くと思います。

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6. with コロナ時代の美容医療

 

新型コロナ感染を防ぐには、Social Distance の確保、マスクの装着、3密の回避。ということでありますが、美容医療に限らず医療というのは生身の人体を扱うので全部無理であります。ですから、せめて施術の前に患者さんも医療従事者もPCR検査をして、陰性であることをお互いに証明し合うというのが、最低の礼儀ではないかと思います。確かにPCR検査の証明率は70%といわれていますし、検査の翌日に感染したら証明も意味がないとも言われますが、ほかに証明の手段がありませんからこれが最も有効は歩法です。それより何よりワクチンが開発され治療方法が確立されることが最も待たれるのは当然ですが。

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余禄:新型コロナのPCR検査はどこで受けたらいいのでしょうか、という」ご質問をよくされますので、お答えします。

新型コロナ感染を疑うような症状(熱発、咳、嗅覚・味覚異常、胸痛、呼吸困難など)gれば、管轄地域の保健所に電話して指示を仰ぐか、最寄りの内科クリニックか病院に診察をお願いして、必要であれば保険もしくは公費で検査をしてもらえるでしょう。

しかし、症状のない方や陰性証明書の必要な方は、保険診療の範疇には入りませんので、自費診療となりあす。水道橋駅前のスクエアクリニックでも応じます。

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© 2020 Hiko Hyakusoku

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