• 百束 比古(HYAKUSOKU HIKO)

その7 脂肪注入による豊胸術について

自分の脂肪を自家脂肪と言うが、例えば腹部の余分な皮下脂肪を吸引で採取して胸に太い注射針で注入する、と言う女性なら誰しも夢見る豊胸術ではないか。それが実際に1980年台の日本で行われていた形跡があるのだ。しかし、如何に自分の脂肪とは言え胸ですべてが生きるわけはなく、結局移植されても多くは死んだ脂肪になって、多くのしこりを形成することになった。脂肪は死んでしまえばパラフィンやワセリンのような炭化水素系異物となって周囲を異物肉芽腫で取り囲まれしこりとなる。このような豊胸術をなされて乳癌の罹患を心配して私を受診した何人もの女性について私は世界で初めて英文誌に報告した。


Hyakusoku H, Ogawa R, Ono S, Ishii N, Hirakawa K.

Complications after autologous fat injection to the breast. Plast Reconstr Surg. 123(1):360-70 2009


左:摘出した注入された脂肪の塊。右:そのCT画像。

しかるに、21世紀に入って、自家脂肪注入による豊胸術が再認識され、内外でいくつかの工夫が繰り返された。その一つが東大の吉村博士(現自治医大教授)による脂肪由来幹細胞の混和による方法である。アイデアとしては秀逸であり、ある程度の成果は得られたが、脂肪を完全に生着させることはなくやはりしこりは形成する例があったと聞く。もう一つは米国のコールマンという形成外科医による、独自の器具を用いた少量づつの注入法の開発である。確かに脂肪細胞を少量づつ分割して注入すれば生着率は上がるはずである。しかし、やはり自家脂肪の完全生着までは困難と思われるので、しこりを形成すれば乳癌の自己診断を阻害すると思われる。

脂肪注入後感染を生じた例。左:発赤部分が感染巣。右:そのマンモブラフィー。



異物肉芽腫の存在が乳癌の自己診断を阻害して、進行乳がんとなった例。

左:合併した乳癌が進行して皮膚に浸潤下状態。右:そのCT像。右乳房に癌の陰裏が見える。




乳癌検診など施術医師が患者の一生を保証するなら許容できる方法かもしれない。次回は破潰してもシリコンが流動しないコヒーシブシリコンバッグについて述べる。


© 2020 Hiko Hyakusoku

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