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執筆者の写真百束 比古(HYAKUSOKU HIKO)

その7 真性ケロイドの特徴とその治療について

人類におけるキズアト治療の最大の壁は真性ケロイドであると言っても過言ではない。赤く腫れ上がったようで固くて腫瘍状に大きくなるのが真性ケロイドの特徴である。その本態は治りすぎ(over- healing)である。創部を修復しようと真皮成分であるコラーゲン線維が過剰に増殖するのである。これには明らかに体質(よくケロイド体質と呼ぶ)に依存し、また人種によって即ち色が濃い人種ほど発生が多い。できる部位に偏りもあり、特に耳介、耳垂、顎、胸、肩、背中、上腕、陰毛部が好発部位である。

要するに重力や緊張のかかる所のようである。しかし、頭、顔、下腿、手の平、足の裏は滅多にできない。なぜか解析が難しい場所である。

原因は耳はピアス孔の感染や金属アレルギー、顎はヒゲの毛嚢炎、体感はニキビの化膿、肩や上腕は予防接種の跡の感染、陰毛部はやはり毛嚢炎が考えられる。何れも小さな感染や炎症から大きなケロイドとなる。



左:ピアス孔から発生したケロイド。中:前胸部の原因不明のケロイド。右:BCGによると思われるケロイド。

さて、真性ケロイドの治療であるが、保存的治療と手術的治療がある。保存的治療は圧迫療法、ステロイドテープの貼付、ステロイドの注射などがある。手術的治療は切除して形成外科的縫合を行い術後に電子線などの放射線を照射する。あるいは、ステロイド注射を複数回行うこともある。真性ケロイドは切除して縫合するだけでは再発し以前より大きくなるので、後療法は必ず予定しなければならない。また、大きなケロイドで摘出して皮膚移植をした場合は術後の放射線照射で移植皮膚の生着が極めて不良となるので、プロペラ皮弁などの局所皮弁移植で被覆しなければならない。

左:多発性ケロイドの胸の中央部の繰り返す感染巣を両側乳房下部のプロペラ皮弁移植で再建した。右:再建手術後の状態。


いずれにせよ、真性ケロイドの手術的治療は一筋縄では行かないので、安易に行ってはならない。

次回は、先天異常である口唇裂、口蓋裂の形成外科的治療について述べる。

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