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執筆者の写真百束 比古(HYAKUSOKU HIKO)

その9 小耳症の形成外科手術について

生まれつきの形態異常、組織欠損ではどうしても顔面に関するものがメジャーである。そういう意味で小耳症は口唇裂と並び形成外科医の腕の見セどころであろう。ないものを創ることこそ形成外科の真髄である。

 しかし、両親の苦悩や悔恨ははかりしれず、悲嘆に暮れている母親にとって、よい形成

外科医に遭うことこそせめてもの救いである。

 それほど、先天性形態異常の手術は、形成外科医の腕とセンスに依存するのである。そんなの科学ではないと言われればそれまでであるが、それほど職人技と芸術的センスが必要で

あり、それがその子の一生を左右するのである。本題に入るが小耳症の形成手術の最高峰といえるのは、「永田悟」という日本人である。永田法はいまや世界中の形成外科医の手本となっている。

 私のいた日本医大形成外科では、大木更一郎助教授が小耳症の形成手術では最も上手であった。耳は肋軟骨を彫刻刀で削り組み合わせて創るが、中々教科書通りには行かず、従って

卓越した芸術性が求められる。更にそれを皮下に埋め込んで耳介にするためには、形成外科医としての経験と理論も必要である。

手術前の状態とデザイン。



自分の肋軟骨を耳の形に削って組み合わせる。



完成した耳介。この症例は私の作品である



次は大木医師の作品をお見せする。

手術前の状態とデザイン。



耳垂の作成と軟骨を入れるポケットの作成。



胸からの肋軟骨の採取。



彫刻刀などで次回の形状に細工する。



完成した軟骨フレーム。



左:軟骨フレームをピケットに入れボルスター(枕)で圧迫する。右:完成した耳介。



次回は、マイクロサージャリーが形成外科にもたらしたものについて順次述べる。

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